平成13年9月議会一般質問

 さて、先の市長選挙では、本田市長は、3500票差という、これまでにない僅差で、からくも当選をされました。これは12年の本田市政への批判が決して少なくないことを示していると同時に、今後の4年間の在り方について、市民は、目を光らせているぞとの現れであります。市長には、まず、このことを胆に命じていただかなければなりません。

 そこで、私は今議会、市長の掲げられた公約の中から『駅西再開発事業について』『子育て支援事業について』の2点、そして近年、特に大きな社会問題となっている『児童虐待への対応策について』の1点、計3点について質問いたします。市長の西尾市の21世紀を担う責任を果たせる「答弁」を期待して質問に入ります。

 今回の選挙は、さまざまな報道にも明らかなように、駅西再開発が、その大きな争点でありました。

 30年以上前に始まった「再開発事業」は、ここ数年、第3セクター方式のホテル建設を大きな柱として推進されてきたわけですが、全国を見ても成功した例はほとんどなく、宮崎県のシーガイアが示すように、多額の借金を自治体が抱えることとなっています。西尾市においても、この点についての市民の憂慮は大きく、このところ、市財政の行く先が案じられる問題となっておりましたことは、皆さんご承知の通りであります。

 市長は、「市民の静かなる反対」「くすぶり続ける不安の声」を察知されたのでしょう。選挙選直前になって、一転、『第3セクター方式はとらず、民間事業とする』『現在発表している32億円以上は市民の税金は使わない』との方針を出されました。これによって、何とか批判をかわし、活路を見い出そうとされたわけです。

 市民は、決して「再開発事業」自体に反対しているわけではありません。しかし、市民の生活を顧みることなく、そこだけに際限なく税金をつぎ込むことに反対しているのです。ホテル事業が成り立っていくかに、大きな疑問を感じていたのです。

 駅前は、きれいな方がいいに決まっています。しかし、時代は大きく変化しました。バブルはとうの昔に終わり、西尾駅前の地価も坪200〜300万円であったものが3分の1以下に下落しています。

 ご承知のように、本来、「再開発」は土地を床に変える、すなわち、地権者の土地を高層建物の床と交換して、土地を生み出し、道路や広場、公園を建設するものです。したがって、土地の価格が、建物の建設費を捻出できる程度でないと再開発は成立しません。その価格は坪当たり200万円から300万円と言われています。

 今、駅前の地価は、坪当たり60万から70万円です。とても建設費を賄える額ではないのです。市長、バブルは終わったのです。転出する地権者にどれだけの補償をされるおつもりですか。国や県の補助があるといっても、それだけで事業ができるわけではなく、地権者も市民もかなり多くの負担を強いられるわけです。財政逼迫の折です。市の負担は、選挙前に発表された32億円、本当にこれだけで済むのでしょうか。

 また、29人中24人は転出し、わずかに残った5人の地権者も公益棟には入らず、ホテル棟に権利を持つと表明されたといいます。そして、入居予定であった商工会議所は、一体どうされるのでしょう。市長は6月議会以来、トップ会談を行う行うといいながら、未だに果たしておられる様子はありません。先の方針変更の際は、トップ会談なしに、会議所の入居は見込めないと発表されているのです。無責任このうえない話ではありませんか。

 公益棟は4階建ての予定です。しかし、1階3階は入居予定者がなくなりました。公益棟についてはどのように見直しをするのですか。

 また、市は、ホテル棟の建つ土地については、市も地権者との共有で参加するとされています。ホテルに関する部分は決して『すべてを民間に任せた』わけではないのです。

 これらを考え合わせると、市民の駅西問題に関する不安が払拭されないのは当然といえます。市民は決して、現状までの「見直し」で善しとしているわけでも、そのまま受け入れてゴーサインを出しているわけでもありません。私は、駅西再開発に関しては、更に更に見直しが必要であると考えます。

 市長は今後、どのような「見直し」をされるのですか。そしてまた、その内容について、市民に対し、具体的に充分かつ説得力ある説明をする責任があることを認識しておられますか。

 今回の選挙の投票率は60.8パーセントでした。そして、市長の2万4千票に対して相手候補は2万1千ですから、本田市政は実は、有権者の3割の付託しか得ていないのです。

 再び「市民と共に歩む」ことを公約された市長には「厳しい市民の目」があることを十二分に認識し、説明責任をきっちり果たしていただかなければなりません。

 そこで、駅西再開発について、次の7項目をお尋ねします。

質問要旨
1)ホテル棟については、民間ゼネコン業者が取得することは決定したのですか。

2)ホテル棟が建設される土地は、市と地権者が共有するというが、土地取得のために市が支出するのはいくらになるのですか。

3)ホテル棟所有者が倒産するような事態になった場合、地代収入がなくなりますが、地主である市はどのように対処するのですか。

4)公益棟に商工会議所が進出しないことは決定したのですか。

5)地権者、商工会議所ともに公益棟に入らないならば、公益棟そのものの建設を考え直すべきではありませんか。開発のためだけの寄せ集めの施設では、結局利用されないものになるのではありませんか。

6)再開発事業の市負担分は32億円というが、これ以上膨らむことはないと市長は約束できるのですか。

7)再開発のため、市が行う起債額はいくらになると試算されているのですか。
 

では、2点目の『児童虐待への対応策について』伺います。
 8月5日、尼崎市では、虐待を受けたため一時保護中であった施設から戻ったばかりの小学生1年生の恭一君が、再び両親に殴られた揚げ句、死亡。遺体はポリ袋に入れられ、遺棄されるという事件が起きました。 愛知県でも、武豊、小牧、名古屋でと、いたいけな子どもたちが虐待に遭い、命を落とす事件が相次いでいます。

 この9月22日には名古屋の22歳の女性が相談相手もなく、病院にも通えず、一人で出産。生活苦で育児もままならず、赤ちゃんは生後1ケ月で衰弱死してしまいました。この母親は、仕事に出掛ける時間以外はミルクも与え、おむつもきちんと交換していたといいますが、子どもを預ける先も知らず、いかんせん孤独でありすぎたのでしょう。同じく18日には、3歳の男の子がコンビニ店で全身あざだらけで保護され、傷害と暴行の疑いで母親が逮捕されました。全国統計での虐待件数は、昨年度1年間で18,800件で、この10年で10倍になっているとのことですが、この数字は、氷山の一角といわれます。

 「虐待」は、単に身体的虐待を加えることだけではなく、養育の拒否や放置、子どもを無視したり罵声をあびせて不安やおびえを引き起こす心理的虐待、性的虐待など、形はさまざまです。命を落とさないまでも、心に体に、癒されることのない傷を負わされる子どもは驚くほどの多さで、私たちの回りに存在しているのです。

 岡崎児童相談所管内でも、虐待の相談件数は平成8年の14件が12年は44件となり、今年度は8月で既に29件に達しています。半田児童相談所では129件といいますから、武豊の事件、名古屋市南区で起きた「杏美ちゃん虐待死事件」が虐待発見・通報のきっかけになっていることは間違いありません。

 昨年の「児童虐待の防止等に関する法律」の施行で、警察の介入が容易になったことなどによって、従前に比べて、児童相談所が前面に出やすくなったり、また、県としても危機介入時にバックアップする児童虐待対応弁護士の設置、調査・連絡調整員の設置など、努力はありますが、いかんせん、事の重大性に比して、余りにも人員が不足しています。岡崎児童相談所の管内人口は53万7千人、児童人口は11万1千人に対して、職員はたった13名です。
 西尾市10万人口に対して配置されている担当者は、非常に有能な方であると聞きますが、たった1名で、夜間の相談にも応じなければならないハードワークで、ご本人の健康が心配になってしまいます。

 児童相談所だけに任せることで済む状況でないことは明らかではないでしょうか。現に、杏美ちゃんの場合は、学校も市も異変を見逃してしまっています。厳しいしつけ・プライバシーという親の言葉に抗しきれなかったことで、幼い命が失われることになってしまったのです。
 こうした状況を踏まえ、各地で、市町独自の虐待防止ネットワーク作りが進められています。生命の危険に至るようなケースは、もちろん、児童相談所が対応するとしても、その前段階での対応、早期発見、予防については、子どもたちを保護する第3者として一番近い人々・機関が受け持たなければなりません。

 今治市では、平成12年から「今治市児童虐待防止連絡協議会」を発足させました。同市は人口11万8千ですから、市の規模は西尾と変わりません。市長を会長に、精神科医、小児科医、産婦人科医、保健所、弁護士、児童施設長、警察、法務局、人権擁護委員、市民の虐待防止ネットワーク、民生・児童委員、保育協会、幼稚園、教育長、保健福祉部長、学校教育課長、福祉部援護課長、女性児童課長、総務障害課長、健康推進課長、保健婦と、子どもたちを囲む全市的専門家と市民、市職員を網羅したメンバーでの取り組みとなっています。
 そして、運営要綱をもって会の活動・予算化に実効性を持たせています。また、個別ケースには最適な担当者がチームを組んで対応しており、ネットワーク化されたことによって、横の連絡も取りやすく、事例があがりやすくなったとのことです。また、効果として大きいのは、こうした協議会があることで縦割り行政の弊害がなくせること、関係機関および一般市民に、児童虐待を理解するための企画事業・啓蒙活動が活発になっていることです。

 虐待は「親子」だけの問題ではありません。ややもすると、親が悪い、母親がなってないからだなどとひとくくりに捉えられがちですが、決してそうばかりではありません。厚生省の統計によれば、親自身が虐待を受けて育った経過がある例は4割にも及ぶとのことです。親自身が子どもにどう接すればいいのかがわからず、自分にされたことをまた繰り返してしまうのです。親もまた被害者の側面を持っていることも、忘れてはいけないでしょう。そして、貧困が虐待の根っこにある例もあります。 少子化で一人っ子も増え、地域で子どもに触れる機会も少ないまま親になり、育児に自信が持てない社会となってしまっていることは大きな要因といえるでしょう。性教育の不備と、若くして望まない妊娠もあるでしょう。また、ここ10年の虐待数の伸びは、不況やリストラと連動しているという指摘もあります。

 危機に陥るケースばかりでなく、小さな虐待はそこら中にあると考えるべきでありましょう。私は、虐待を個々の特殊な事件と捉えるのではなく「地域・社会」を反映した問題として考えない限り、解決への道はないと考えます。だからこそ、ネットワークの構築が必要と考えます。
 また、虐待というと、子どもを守る方にばかり目が行きがちですが、親への支援も同時に行わなければなりません。どうして虐待をしてしまうのかを一緒に考えるような、親の内面にまで入った支援、カウンセリングなど専門家のサポートが必要です。そして、継続的な見守りが欠かせないのです。親への支援がなければ、また虐待は繰り返されるのです。そのためには、少人数の担当者が係わるだけの体勢ではとても充分とは言えないのではありませんか。

 昨年、京都府で行われた学校と保育関係者へのアンケートでは、虐待対応の経験者は機関連携や事後対応など具体的活動を要望し、未経験者は、初期対応や研修、子育て支援を求めているとの報告もあります。
 西尾市で、名古屋や尼崎のような事件が起きない保証はどこにもありません。早期発見・予防策としても、関係者のネットワーク作りは急務です。そこでお尋ねします。
質問要旨
1)児童虐待の予防・発見・事後について、現在、市はどのような対応をしているのですか。危機児童・家庭サポートチームの具体的活動内容はどのようなものですか。

2)市内医療機関、特に小児科医とは密接な連携をとっていくべきではありませんか。その具体策はどのように考えていますか。

3)児童課と教育委員会、保健センター等の連携はどのように行われていますか。

4)問題と思われる事例についての追跡調査は、どの機関が担当しているのですか。

5)広く関係機関を網羅する形での「児童虐待防止連絡協議会」を設置、条例化して、発見・諸事例の情報交換・対応を 密にするシステムをつくるべきではありませんか。

6)関係各機関との共通対応マニュアルをつくるべきではありませんか。

 子どもと、その親が心穏やかに子育てができる西尾市となるように願って、次の質問に移ります。只今の2問目と密接に係わる問題である『子育て支援事業について』です。
 親、特に第1子を育てるに当たって不安に陥りがちな母親を支えるには、行政による充分な子育て支援策が必要かつ有効です。私も2人の子どもを育てましたが、高層住宅の5階に住み、周囲は知らぬ人ばかり、夫の帰りは連日深夜に及ぶ毎日は、子育てに不安を持つこともしばしばでした。幸い、同じ年代の子どもを持つよき友人を開拓することができたこと、近くの公園をたまり場にして、毎日子ども同士で遊ばせることができたことで、そうした時期をうまく切り抜けることができたのはラッキーだっただけだと思います。
 市長は、今回公約で『子育て支援センターを小学校区毎につくる』と公約されました。子育て支援についての重要性を大いに認識しておられる現れとして評価したいと思います。

 現在、市の子育て支援センターは開所2年目の八ツ面が1ケ所、あとは今年5月から始まった、サブセンターが東部保育園と巨海保育園の2ケ所にあるだけです。遅きに失している状態を挽回しようとのお考えと思います。私も見せていただきましたところ、3ケ所とも経験豊富な保育士さんが頑張っておられ、利用率は非常に高く、市内の広範囲から通って来られる0歳から3歳までの子どもたちとお母さんで溢れ返っている状況でした。

 なぜならば、東部・巨海とも、空き室を週2回各1時間半だけという限られた時間内のものでしかないからです。すなわち、あくまで本来の保育業務の邪魔にならない範囲での利用でしかありませんし、まさに保育園の付け足しとしかいえないものなのです。また、唯一のメインセンターである八ツ面ですら、自由な施設利用は週4日午前中の1時間半に限られているからでしょう。
 利用者は、八ツ面で、昨年度の子どもの登録者は800人、延べ13,161人、6,152組の親子が来所しており、 サブセンターでも巨海の場合、最高月の7月には9回の開所に大人203人、子ども240人計443人を記録しています。主に使用しているのは20畳あるかないかの部屋ですから、その混雑ぶりは想像していただけると思います。特にこの時は、0歳児が92人、1歳が66人、2歳が79人とのことでした。需要は非常に多いことが歴然としています。

 何人かのお母さんにお話しをききましたが、異口同音に、こういう場が欲しかった、とても助かっている、いいアドバイスがお友達からも先生からももらえる、悩んでいるのは自分だけじゃないとわかってよかった、こういう声でした。
  
 先月、私は政務調査費を利用して、東京都武蔵野市の子育て支援施設「0123吉祥寺」「0123はらっぱ」の2ケ所を視てまいりました。名前が示すように、0歳から3歳までの、家庭での育児を選択した親御さんが子どもたちを連れて遊びに来る通所施設です。
 吉祥寺の方は、全国の子育て支援センターのモデルとなった、理念と
歴史のある施設です。子どもたちが遊びやすいように、さまざまな工夫がこらされたメインホール、読み聞かせ用の図書コーナー、0歳の子と3歳の子がバッティングしないよう大きな子には工作室、0歳には畳の部屋、貴重品を入れるコインロッカー、お母さんが子どもを視野に入れながら一息入れられるセルフサービス1杯30円のコーヒーコーナー、そして、育児用品のリサイクルや催しと、さまざまな情報がピンで止められた情報交換コーナーなどなど、一口に言って「心休まる、楽しい施設」でした。

 職員は2園併せて10名。開園は朝9時から夕方4時半までで、昼食をとる場も設けてあります。休園日はずらしてあって、土日もOK、誰でも、いつでも、どちらにでも行けるように設定してありますとのことでした。両施設とも1日140組以上の親子の利用があるそうです。
 ここでも、何人かの方に伺いましたが、お昼も通していられるので、ゆっくりできる、気ぜわしくない、午前午後と開園時間が長いので都合のいい時間に行けて利用しやすい、友達をつくってもいいし無理をしなくてもいいと自分のそのままを受け入れてくれる施設なので使いやすい、とのお話しでした。
 もちろん、西尾での意見と同じ声もたくさんありましたが、0歳から3歳までの専用施設なので、より使いやすいということがよく分かりました。園庭も大きい子とぶつかる心配もありませんでした。

 私が武蔵野で気づいたことは、ここでは、子どもを受け入れることはもちろんだけれど、同時に、いや、それ以上に、子どもへの接し方を親が学び、育ち合うことを目的にした施設であるということでした。
 利用方法や規則については、先生方はいちいち指示を出しません。その代わり、誰にも分かるようなさりげない「道しるべ」がそこここにあり、見守られています。例えば、トイレの床は汚したら、すぐ拭けるように小さな古布が何枚もかわいい小箱に入っており、使った布を入れるよう、床にはプラスチックの箱が置いてあります。粗相はしないにこしたことはないけれど、まだまだトレーニング中の子どもたちです。私が親なら、怒らずに、汚したら拭けばいいのですよ、と優しく言ってもらっているような気がして、安心します。それぞれの家庭でも、同じようにすれば、子どもたちは「粗相をしたら拭くこと」を覚え、自分でもやることを学ぶでしょう。

 私は大切なことは、子も親も学び、気づく場であるということだと思います。市長は、子育て支援センターをどのようなものとお考えですか。 さて、先日、教育委員会では公民館で「親業講座」を開催され、参加者は婦人の家175人、3公民館で176人と大変な盛況であったとのことです。託児がついていたこと、近くの公民館が使われたこと、いい講師であったこと、成功要因はたくさんありますが、何といっても子育てについての、親への支援が待ち望まれているということでしょう。
 受講後の感想を拝見しましたところ、親の在り方に気づかされたということ、子どもへの接し方の今後等、親としての自分を振り返る言葉が多く、また、要望としては、この講座を継続して、定期的に、頻繁に、少人数でと、圧倒的に支持し、続けて実施して欲しいという切実な声でした。大変結構な子育て支援であったと思います。教育委員会の今後の子育て支援策もお示し願いたいと思います。

 子育ては継続的なものです。妊娠したら保健センター、そして、子育て支援センター、保育園あるいは幼稚園、そして小学校、学童保育とそれぞれの場がうまく連携をとりながら、虐待などのない、子どもたちによりよい環境整備を目指す指針となる答弁を期待いたします。
質問要旨
1)市長は、今選挙にあたって、子育て支援センターを小学校区毎につくると公約されましたが、市長の考える同センターとはどういうものですか。

2)保育園・幼稚園併設の形だけでは充分とはいえないと思いますがどうですか。

3)就園していない乳幼児とその親が、土日も含めて何時でも誰でも利用できる、独立型の通所支援施設を設けるべきではありませんか。