平成12年12月議会一般質問

                                              鈴 木  規 子


 20世紀最後の年、わが市は非常な財政難に直面しつつ、新世紀を迎えようとしております。ここ10年の西尾市は、 借金をしてのハコ物行政から脱却することなく、財政は悪化の一途を辿るばかりでした。新世紀の新年度こそ、小手先ではない『行政改革』を果敢に実行していかなければならなりません。

 ただし、行政改革といっても、単に経費節減ばかりをさすわけではありません。最も大切なのは『行政効率』をどう高めるかの視点であります。

その上で、諸事業の中で最も優先するもの、あるいは市民要望の多いものに集中投資する、私は、今議会ではこの2つをポイントに、 市立幼稚園の完全給食実施、浸水対策、職員名簿の廃止についての3点の政策提言をいたしたいと思います。

 行政改革に力を入れておられる市長にあっては、すぐにでも採用すべき事柄ばかりであると思いますので、実行にあたっての具体的なご答弁をお願いいたします。

 まず1点目は、市立幼稚園の完全給食実施についてです。

 現在、市立幼稚園では、業者納入のいわば寄せ集め的な状態での、給食とはいえないような給食が提供されています。同じ市立でも保育園では各園で作った給食が提供されているのと比べ、大きな格差があります。厚生省と文部省はすでに、保育園と幼稚園を同等のものとして行こうの方針を打ち出していますが、このことは、市長もご存じのことと思います。

 これまで、多くの父母から、完全給食実施についての強い要望が出されているにも拘わらず、これが実施に至っていないのは何故でしょうか。

 ひとつには、登園日数が少ないため、各園に調理員をおくのはいかにも効率が悪い、お金がかかりすぎるということでしょう。

 では、隣接する小学校あるいは中学校で、幼稚園の分の給食も作ってはどうでしょうか。

 西尾市でも、少子化は、確実に進んでいます。

 この10年間で児童生徒数は、11,843人から10,126人と15%も減っています。平成7年からの5年間をみても850人の減、なんと

中規模校2校分も子どもたちの数は減っているのです。それに比べ、調理員の数は減っていません。10年前の平成2年度は79人、5年度は77人、平成11年は76人とのことです。

 施設に変化はありませんから、調理員ともにキャパシティ、容量は充分あるわけです。「今あるもの、施設も人も最大限に有効活用」して市民へのサービスを充実させることは、まさに『行政改革』であります。行政改革は、なにも予算カットや人減らしばかりをさすわけではありません。 

 行政改革は、行政の能力を最大有効活用する方策であること、市長には、この点を十分にご理解いただく必要があります。これは、3つ目の質問でも触れますが、職員の意識についても言えることはもちろんであります。

 ところで、ようやく我が市でも、昨年3学期から、小学校2校、中学校1校で給食の民間委託が行われるようになりました。その内容はいずれも、食材納入は従前と同様であり、献立は栄養士が作成するもので、自校で調理する方式は変わらない、調理員のみ民間が担当するというものです。

 もともと、主食のパンもごはんも、民間業者が炊いたものを学校まで運んできていますから、調理するのは副食についてのみであることは皆さんご存じの通りです。この民間委託後の給食も、父母からも、子どもたちからも、特に異論は出ておらず、評判は上々と聞いております。私も、教育経済委員会の視察で、民間委託校と従前通りの学校と両方を試食させていただきましたが、どちらも美味しく、栄養的にも考えてあるものと思いました。

 市としては、今後も、順次民間委託校を増やしていく計画であるとのことです。民間委託の委託範囲を拡げて、市立幼稚園の給食もここに含めていくべきではありませんか。

 西尾幼稚園であれば、西尾小学校はすぐ隣り合わせですし、平坂幼稚園も鶴城幼稚園も目と鼻の先に学校があるのは何と幸いではありませんか。

 そこでお尋ねをいたします。


質問要旨
  1)民間委託をした学校給食は、委託前と比較してどの程度経費節減ができましたか。

  2)今後5年間で正規職員調理員の退職者は何名と見込まれますか。

  3)今後、学校給食の民間委託はどのように進める予定ですか。

  4)これまで父母の要望が極めて強いにもかかわらず、幼稚園の給食が実施されないのはなぜですか。

  5)学校給食の民間委託推進に併せて委託範囲を拡大し、近接する学校の給食室を活用して、幼稚園でも完全給食を実施すべきではありませんか。

 2点目は、浸水対策について伺います。

 先の東海豪雨では、名古屋市はじめ被害の大きかった地域で時間あたり100ミリ近くの降水量となり、堤防が決壊しました。また、河川に排水しきれない雨水が街にあふれ出すという、まさに都市型の洪水といわれる内水氾濫が発生し、刈谷・高浜・岡崎など近隣各地にも多くの被害が出ました。岡崎市では時間最大雨量79ミリにも達し、豊田市では矢作川右岸で堤防上限まで30センチとなって、第2次避難勧告が出されています。

 今回西尾市が時間最大43ミリの雨量に止まったのは、当市がひたすら雲の切れ間にあたったことの幸いであります。

 しかしご承知のように、近年、地球温暖化による気象変動は大きく、3年に一度、5年に一度と言われていた規模での洪水・浸水の被害が、更に頻繁になっていること、これが問題であります。ここ10年間の浸水被害は、平成2年に2度、3年、6年に2度、9年、11年と立て続けに発生しております。ことに平成9年9月の浸水被害は二ノ沢川周辺・下町地区と平坂地区で床上20世帯・床下135世帯にも及び、全国ニュースで報道されたのは記憶に新しいところです。このときの被害は32町内にわたり、時間最大42.5ミリ・累積雨量236.5ミリというものでした。

 今回の豪雨は、それ以上の規模であったことになります。

 10年に1度といわれる被害が5年に1度となり、100年に1度といわれる災害が実際に発生している実態に、市はどのように対策を講じておられるのでしょうか。

 浸水常習地帯のみでなく、矢作古川は、また、東部丘陵地域などには危険箇所はないでしょうか。万一に備えてのハザードマップ(災害予想図)は、降雨量に応じた危険個所の範囲、緊急避難の告知方法、非難所を示したものですが、これらは、「市からの情報」としてキチンと市民に提供されているでしょうか。大阪高槻市では、ハローページに淀川決壊に備えたハザードマップが掲載してあるとききます。

 今回の災害で明らかになったのは、情報を持つ市民は心の準備ができていたということです。避難勧告にも進んで対応し、地域住民のリード役を担われた例もききます。行政の最大の責務は、住民の生活と安全を守ることです。そして、万一の場合はその被害を最小限に止めることにあります。情報を正確に把握し、自主的に行動する市民を増やしていくことは予防策として大きなキーワードとなるのではありませんか。心の準備のあるなしは大きいのです。

  また、浸水被害というと、市は二ノ沢川・北浜川の改修で対応する、そしてそれは県頼みだとの答弁に終始しておられますが、ではこの2河川の改修は、いつになれば終了するのですか。また終了時点で、どれだけの雨量に耐えられるのでしょうか。

 改修終了の目標年度はいつなのか、年度毎の進捗率はどれほどなのか、

これらについて、もっと積極的に市民に示すべきではありませんか。

 私も河川改修については県事業としての比重が大きいこと、また、市の財政難についても承知はしておりますが、市民生活の安全は何より最優先に考えられなければなりません。

 東海豪雨では、保水地域であった水田・畑がどんどん宅地化され、その保水能力がどんどん低下していることが顕著に現れました。先に述べた内水氾濫とよばれるものです。わが市も例外ではなく、二ノ沢川流域の市街化区域及び既成市街地は80%に達し、年々その度合いは大きくなるばかりです。                   

 河川改修・下水道整備・雨水幹線整備はもちろんのことですが、それ以外の方策・遊水池設置にももっと積極的に取り組むべきであります。平成10年には900万余をかけて浸水対策・遊水池の検討をしておられますが、この結果は、その後どのように生かされているのでしょうか。

 横浜市では、鶴見川氾濫への対応策として市街地にどんどん遊水池を造っています。都市計画法にしたがった宅地開発要綱を定め、公益用地の確保に努め、公共施設を活用したものはもちろん、現在では大小取り混ぜての遊水池は1400ケ所、そのボリュウム149万トンに達しているということです。

 それらの形は地下式もありますが、運動公園を兼ねたもの、学校の運動場、駐車場を兼ねたもの、テニスコートやゴルフ練習場、団地の庭や遊び場を兼ねたものと、本来の機能に遊水池という機能をプラスしているのです。駐車場の場合は、深さ15〜20センチとのことですが、数をたのむことで決して少なくない保水量を確保できているとのことですし、ひとりでも多くの市民に治水対策を理解をしてもらう一助になります。

 また、比較的大きな遊水池の場合は固定資産税の減免を行うことで事業を推進しています。私の聞き取り調査に対して、担当の方の「市独自でもできることはどんどんやるのだ」という気概に溢れた回答は印象的でした。これは都市化に対する具体的かつ有効な方策であります。

 そこで、次の4点について質問いたします。浸水対策については過去にも多くの一般質問が行われておりますが、抽象的な答弁ばかりです。現行計画で被害は出さないといえるのか、具体的にお答え下さるようお願いいたします。


質問要旨
1)先の東海豪雨では、岡崎市で時間最大79ミリの降水がありましたが、西尾市であった場合、二ノ沢川の改修で対応することができますか。また、平坂地区ではどうですか。

2)市民に向けて、洪水ハザードマップ(災害予測図)を示す必要はありませんか。

3)遊水池による保水をもっと積極的に考えるべきではありませんか。平成10年3月議会で遊水池についての調査・検討を答弁されていますが、検討結果はどうでしたか。

4)大規模遊水池だけでなく、市民にも協力を求め、例えば大規模店舗の駐車場を利用した遊水池等も採り入れてはどうですか。

 3点目は職員名簿の廃止についてです。

 今年度から従前の職員名簿がなくなりました。人事異動時の異動一覧表とともに配布される職員配置表があるのみです。私の聞く限り、この職員名簿廃止には庁内でもわかりにくいとのブーイングが多数出ておりますし、先日は、市民の方から「必要があって、市役所に職員の配置についてを聞いたところ、3ケ所もたらい回しされた揚げ句、職員名簿がないからわからないとの返事だった。」との苦情をききました。

 今、市がアピール中の『さわやか行政サービス』は一体どこへ行ってしまったのでしょうか。こんなことで市民ににっこり笑ってお帰りいただけるのでしょうか。

 言うまでもなく、市役所は市民がお客様です。誰が、どの部署で、どのように働いているのか、市民の皆さんに即座にわかって当然ですし、わからなければ、各部署での責任もあいまいになろうというものです。

 残念ながら、電話を受けた時はまず担当と氏名を名乗るという、民間では当然の接遇も十分ではないようであります。もちろん、さわやかな対応をして下さる職員もたくさんおられるのですが、これが全員であったらと願うのは私だけではなく、多くの市民の声です。

 職員名簿の廃止は、46万余の経費節減と住所と電話番号という職員のプライバシーに配慮したものとききました。しかし、職員は市役所にいる間は公の立場です。担当と氏名、仕事と責任の範囲は市民に積極的に公開されなければなりません。各人の住所と電話番号は私的な部分でもありますから、これは削除すればよいでしょう。また、印刷は庁内で行えば経費はそれほど掛からないはずです。

 安城市では、職員名簿に顔写真も載っているので非常にわかりやすいとの評判を聞いています。顔写真も今や、デジカメとパソコンの時代です。これもまた、庁内で充分に対応できるのではないでしょうか。

 経費削減というだけで市民へのサービスが低下するのでは、本当の行政改革とは言えません。

 市民の多くはこうおっしゃいます。「職員に話しかけにくい、1階のカウンターはまだしも、2階3階のドアはとても開けにくいし、どの人に声をかけていいかもわからない。顔が見えない。」と。それでは、職員の顔と名前がわかるようにしてはどうでしょうか。顔が見えれば声はかけやすい、職名と名前がわかれば更にはっきり用件を伝えることができるのではありませんか。

 私たちが想像する以上に、市民の目からみた市役所は閉鎖的であることに市長はお気づきにはなるべきです。

 各課の入り口の、さわやか行政サービスのポスターの隣に職員の笑顔を並べようではありませんか。

  質問要旨
  1)市民へのサービスを考えるならば、どの職員がどの部署を担当しているかについての周知を欠いてはならないのではないですか。

  2)住所・電話番号については削除すればプライバシーの問題は解消するのではないですか

  3)市民への周知を促進するために、顔写真入りの名簿を作ってはどうですか。     

  4)どうしても名簿を廃止するならば、各課の入り口に職員の氏名・写真を掲示してはどうですか。