1999年9月議会 一般質問
@ 男女共同参画社会基本法について

 質問第2、1. 男女共同参画社会基本法の施行にともなう女性政策について、鈴木規子さんの質問を許します。
      〔1番 鈴木規子 登壇〕
◯1番(鈴木規子) まちに子どもがいなくなる、空想科学小説の話ではありません。どんどん子どもを産まなくなる社会、長生きすることを喜べない社会、ストレスだらけの社会、それが今の日本です。さまざまな社会的条件が制度疲労を起こしているのです。先ほど、三ッ谷議員も指摘をされたとおりの問題です。
 皆さん、少子高齢化対策の特効薬は何だとお考えになりますか。それは、女性にとっても男性にとっても暮らしやすい社会の実現です。安心して子どもを産み育てること、だれもが日々の暮らしを楽しみ感謝して過ごすこと、将来に希望を持って学び、働くことができ、安心して老いが迎えられる社会に変換していくことです。このために必要なのは、男は仕事、女は家庭という役割分担社会ではなく、男性も女性もともに社会的責任、家族的責任を担い合って働き生活する社会システムづくりではないでしょうか。キーワードは、「男女共同参画」「男も女も共に」です。
 2007年をピークに我が国の人口の絶対数が減っていきます。特に15歳以下の子どもの数はどんどん減っており、人口問題研究所によれば、昭和50年代には人口全体の24%を占めていたものが、今では16%の 2,000万人になっています。合計特殊出生率は1.39ですから、少子化に歯どめがかからない限り、さらに減り続けることになります。逆に、65歳以上の高齢者の割合は高くなる一方で、いわゆる団塊の世代が老人となる2025年には高齢者は27%、2050年には32%に達することは皆さん既にご承知のとおりです。国を支える労働力人口、納税者は減るばかりです。人口の減少、労働力人口の低下は経済成長率、国民総生産の低下に直結し、我が国にとって民族、国家の存亡にかかわる危機であるという学者もいます。この問題を解決するには、男性ばかりが働くのではなく女性も働いて税金を納めてもらう、これ以外にないのではありませんか。
 現にデンマーク、ノルウェーを初め、一足先に高齢化が進んだ国々では女性たちの8割以上が生涯を通して働き続けています。そのために国が介護と育児を社会全体で支えるように整備し、同時にそうした場所を働く場としてふやすことで労働市場の活性化も促しているのです。これらの国々の国民総生産は人口比にして日本と遜色がありませんし、福祉、環境については我が国を挙げてお手本としているところです。「世の中、もう少し生きていきやすくするために、みんなでもうちょっとずつ仕事も生活も責任も分かち合おう。だから、男女の区別はなしだよ」ということで、北欧では税制は世帯別ではなく個人制とされ、ノルウェーの男性の育児休業取得率は80%に達しています。この育児休業取得は、期間は1カ月、 100%の給与保証となっています。育児に直接かかわることで、子どもとのきずなを取り戻すチャンスを得た北欧のお父さんたちは仕事人間から解放されて、改めて家庭や地域社会に目を向け始めています。女性たちもまた、甘えることなく責任を持って仕事に当たる厳しさと納税の義務を引き受けているわけです。
 今までの日本の仕組みでは、結婚した女性たちは家庭で無償で働くことで納税を免除されてきました。かわりに男性たちは過労死すれすれまで働き、自分だけでなく2人分、妻の分も税金や年金を払ってきたわけです。家庭を顧みる間もないほど忙しすぎる夫たちと、育児や介護に孤軍奮闘する妻たちで支えられた戦後54年、これまでの経済発展には敬意を表しますが、今や家族や社会の形態は変わり、新聞やテレビにあらわれる子どもたちの閉塞状況に代表されるように、消費文化と経済を優先し過ぎた歪みが大きく生じてきています。次代を担う子どもたちをきちんと育てることこそ、社会の使命であったはずなのにです。
 男は仕事、女は家庭に象徴される意識は、もともとの性に由来するものではなく、実は明治以降の富国強兵策、外国に追いつき追い越せの号令のもとで社会的、文化的につくられた性差に基づくものなのです。こうした性別役割分業意識の上につくられた社会制度や慣行は、女だから、あるいは男だからこうでなければならないという枠をつくり、そうでない人を排除したり差別することにつながっていることにも私たちは気づかねばなりません。
 我が国は経済大国となり、世界の先進国となりはしましたが、そのあげくに21世紀の社会が立ち行かなくなるとしたら悲しすぎはしないでしょうか。時代と社会の変化に沿って、私たちもそろそろ働き方も生き方も変える必要があるのではないでしょうか。
 この6月15日、男女共同参画社会基本法が成立し、同月23日公布、施行となりました。これを、以下基本法と言います。この法律は、21世紀に向けて、こうした今までの働き方や生活のあり方をある種軌道修正する役割を担うものと言えましょう。国は、男女共同参画社会とは男女が社会の対等な構成員として、みずからの意志によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、ともに責任を担うべき社会であると定義していますが、私は個々の人々が、それぞれに自分のありように目を向け責任を持つ社会、弱者に目を向ける社会であると考えています。そして、こうした社会を実現することは人権を確立し、民主主義を成熟させる上での基本的な条件であり、普遍の課題でありましょう。さきに述べたように、特に今、少子高齢化が進み、これまでのような経済、社会システムでは立ち行かず変換が迫られている我が国にあっては、先送りは許されない問題です。
 これまでの男女共同参画への世界の流れを見てみますと、国連では昭和50年の国際婦人年に世界行動計画を採択し、その後10年を行動する期間として女子差別撤廃条約や、西暦2000年に向けて世界各国が効果的措置をとる上でのガイドラインである婦人の地位向上のための将来戦略が決定されました。そして、平成2年には、さらに各国政府が取り組むべき優先行動分野を明記した行動綱領が示されています。我が国でもこれらに呼応し、昭和52年の国内行動計画を初めとして民法、戸籍法の改正を初めとし、パートタイム労働法、育児介護休業法、男女雇用機会均等法など国内法を整備してきましたが、総合的な法整備と、さらなる取り組みの必要性から、このたびの基本法制定に至ったものであります。
 この法律は、基本理念として3条から7条までに男女が性別による差別的取り扱いを受けないこと、男女の人権の尊重、社会における制度または慣行についての配慮、政策等の立案及び決定への共同参画、家庭生活における活動と他の活動の両立などを求めています。
 また、8条及び9条において、国と地方公共団体は基本的理念にのっとった促進施策を総合的に策定し、実施する責務を有することが規定され、積極的改善措置も含むものとなっております。これまでも男女共同参画促進の必要性については指摘されていたところですが、今回の基本法9条は各自治体の取り組みの具体性を促すものとしたのが特徴といえます。
 さて、愛知県では、平成元年に女性行動計画「あいち女性プラン」を策定し、実質的な男女平等社会の実現を目標に、1)男女平等意識をめぐる啓発・教育、2)あらゆる分野への社会参加と交流・連帯の輪の拡大、3)就業環境と就業条件の整備、4)健康の増進と家庭生活の充実、5)推進の5項目を重点目標として、県のすべての施策に取り組む課題を明らかにしてきました。そして、施策の運用に当たって特に留意すべき視点として、「男は仕事、女は家庭」の考え方の是正、「男も女も共に社会参加」の条件整備、交流、連帯の輪を広げ挙げています。県内市町村に対しても、この10年、市町村女性施策関係実態調査等を通じて県に準じた取り組み、すなわち女性プランの策定が促されてきたことは承知しておられると思います。女性プランは、市の総合計画女性版とお考えいただければよいわけです。市民の半分は女性でありますので、半分の女性が満足するための施策、総合計画ということになるわけです。
 また、女性に対する対策は男性に対する対策でもありますから同じことが言えます。行政施策全体に具体的に女性の視点を置きつつ年次目標を定めて、各部課を横断的に連携させ、全市的に取り組みを進めるものということになります。進め方としては、プロジェクトチームといいましょうか、まず庁内の女性施策に関する関係各部課の連絡調整を行う行政推進会議を設け、同時進行で民間有識者の意見を聞く婦人問題懇話会、これは新たに設置するところでは名称を改めまして男女共同参画社会推進懇話会となっているところでありますけれども、各種女性団体や地域リーダーを横断的につなぐため、例えば婦人団体連盟等を設立し、女性プラン策定に移る。県からは、このような働きかけがされているはずです。
 何事も計画の策定に当たっては、市が市民をアリバイ証人やお客さんではなくパートナーとしてとらえ、計画当初から行政のプランニングに参画していただく場を設営することによって相互に信頼関係を築いていく、いわゆる人づくり作業なしには十分なものはできません。先進地の春日井市を例に見ますと、昭和57年に青少年婦人課を設置、58年に意識調査実施、懇話会を設置、62年には女性プランを策定、平成8年には同第3次プラン策定に至っており、挙げられた主要事業は 308、ほぼすべての部課にわたっています。
 平成10年6月の県の調査によれば、検討中を合わせてこれらのものが設置中であるのは、内部調整組織で言えば二十一市一町、女性問題懇話会設置が十九市六町、女性団体連絡協議会は十六市八町に及んでいます。そして、既に女性プランを持つのは十九市四町とのことであります。いかに控え目な西尾市であっても、もはや他市の状況を見て考えたいという段階ではないことがおわかりいただけると思います。このことは、やらなければならないことであるのです。
 これは、まさに女性施策は単に女性のためのものだけではなく、等しく男性も女性も生きやすい社会づくりのために進められること、生活をする人の目の高さで施策を考えることを示すにほかなりません。女性問題は男性問題でもある、このことを議場を占める男性の皆さんにぜひとも理解していただかねばなりません。
 それには、逆の立場であっても納得できることかどうかという問いかけを何事においても常にみずからに、そして差別を受けているかもしれない相手に試みることです。それによって、これまでと違う視点に気づかれるはずです。さらに、これまでと違う視点、生活者の視点で政策を点検することが女性プラン策定の基礎であることを理解していただけると思います。
 そして、さらに職員に向けて、市民に向けて、自分の性とは違う性の視点や立場を知ることの重要性を説いていかなければなりません。市民の半分は女性なのですから、再び申し上げますが市長初め、幹部職員の皆さんには特に女性施策への理解と女性の視点、生活者の視点を常に認識し、保つための研修が必要不可欠と言わねばなりません。男女共同参画を踏まえつつ地域の人材を養成する講座の開設は、自立した市民を育て、市の活性化につながることを確信しております。
 私も、実は県が主催する、こうした講座を公募で受けた経験があります。おかげをもって、今この席にあると言っても過言ではありませんので、政治参画を実践する議員として身をもってこの有効性を示しているわけで、誠にうれしい限りと考えております。
 知多市では、女性センター開設に当たって計画が持ち上がった当初の時点で、行政から市民アンケート調査を依頼した女性グループが継続的に研究を続け、施設建設に向けての提言書を出しています。このグループにも、私と同じく県の講座を受けた人たちが活躍をしています。
 さて、西尾市の女性施策は、市長就任以来の10余年、これを促す声にもかかわらずほとんどなきに等しい状況です。残念ながら、懇話会も女性団体のネットワークもまだ存在しません。前本多市長の昭和57年ごろ、女性学入門から始まり、女性の社会参加をテーマにしたセミナーが開かれ、終了生は自主サークルをつくるなど大盛況だったそうですが、これはわずか3年間だけで、この後はこの種の連続講座は全く途絶えています。発掘できたかもしれない人材を考えると、何とももったいない話ではありませんか。
 平成9年9月議会でも、女性施策が取り上げられています。このときの市長の答弁では、政府が2000年末までの早い時期に審議会の女性登用率20%を達成目標としていることを承知しておられますし、各種委員会の登用にあっては性格や審議内容を考慮し、西尾市独自のクォータ制の採用についても前向きに検討をするとのお答えでした。このクォータ制というのは、審議会、委員会などに一定の割合で女性を含める割当制というものです。市長は、この2年間どのように考慮し、前向きに検討してこられたかをお聞きいたします。
 また、このとき女性行政課設置の必要性については、これは認めず、生涯学習係で十分対応できるとのことでした。しかし、今回、私の一般質問に際しては、どこが答弁を担当するかについて大分やり取りがあったように聞いています。1係だけの対応では無理があるのではありませんか。女性施策推進については、その性格、事業内容からして市長部局に配置、直属にすべきではありませんか。
 審議会、委員会では女性ゼロの会がありますでしょうか。ありましたら、数と内容をお答えいただきます。
 今回は、男女共同参画社会実現のためのパート1として、施策の中に女性の視点をどのように取り入れていくのかという基本方針に絞ってお聞きをいたしましたが、あと1点、これは早急に取り組んでいただかなければならない女性への暴力について伺います。
 先日、夏休み中の西尾東高校生が登校日の朝、同級生だった男性に刺殺されるという事件が起こりました。この事件は単なる殺人ではなく、加害者も被害者も未成年であったこと、つきまとい(ストーカー)のあげくという事件であったこと、これらから未然に防ぐ手だてがなかったのかという幾つもの無念の思いとショックを禁じ得ません。何らかの相談を持ちかけられる場所がなかったのかとの思いは、だれもが持たれたと思います。ところが、現状では暴力の可能性だけでは警察は動きませんし、ストーカーを規制する法整備も行われていません。同様に夫婦間の暴力、パートナーからの暴力にも社会は無防備です。夫から暴力を受け続けていた妊婦が、逃げ込んだ実家の玄関先で刺殺された事件も記憶に新しいところです。暴力で生活を脅かされる女性たちへの対策は、どのようになっているでしょうか。これまでの男性優位の社会のあり方の中では、女性は少々の暴力は我慢をするものという慣習が黙認されてこなかったでしょうか。職場や学校でのセクシャル・ハラスメントや夫婦間の暴力について等の問題について、市としてどのように考えておられるかを伺います。
 男女共同参画社会基本法に伴う女性施策について、西尾市ではこれをどう進めていかれるのか、次の10項目を質問いたします。
 1、女性政策担当は、今後どのように活動する予定ですか。女性関係行政推進会議(内部調整組織)は設置するのですか。
 2、女性プランの作成の時期、方法はいかがですか。
 3、女性団体連絡協議会、男女共同参画社会推進懇話会を設置すべきではありませんか。
 4、女性学を踏まえた講座、託児つきのものですが、人材養成事業など、地域の女性リーダーを養成する講座を設営するべきではありませんか。
 5、各種審議会委員会委員への女性の登用率の推移はどうですか。
 6、各種委員の選任についての女性の登用率を高めるため、公募の率を高めてはどうですか。
 7、市役所内の管理職への女性の登用率は、どう推移してきましたか。また、今後、女性の登用をどのように進めますか。
 8、女性が働きやすい職場づくりのため、女性問題に関する職員研修、特に管理職に対するものを実施してはどうですか。
 9、女性問題、特に女性への暴力についての実態は市としてどのように把握していますか。
 10、被害女性の相談、カウンセリング窓口を設けませんか。具体的支援はいかがですか。


 以上、法の趣旨を十分ご理解をいただいた具体的な答弁を期待して、登壇による質問といたします。